お葬式やお墓参りで「うちは浄土真宗だから」「曹洞宗の作法では」という言葉を耳にしたことはありませんか?仏教には「宗派」という区分がありますが、普段の生活ではあまり意識することがないかもしれません。しかし、法事や葬儀の際には宗派によって作法が異なるため、基本的な知識を持っておくと安心です。この記事では、仏教初心者の方でもわかるように、宗派とは何か、なぜ分かれたのか、何が違うのかを簡単に解説します。
「宗派」って何?
宗派とは、簡単に言えば「同じ仏教という宗教の中でのグループ分け」です。元々は一つだった仏教が、長い歴史の中で異なる考え方や実践方法を持つグループに分かれていったものが宗派です。
たとえるなら、「料理」というジャンルの中に「和食」「中華」「フレンチ」があるようなものです。どれも料理であることは変わりませんが、使う食材や調理法、味付けが違います。仏教の宗派も同じように、お釈迦様(ブッダ)の教えを大切にするという基本は同じですが、どの教えを重視するか、どのように実践するかが異なります。
📌 ポイント
宗派 = 仏教という大きな枠組みの中での「流派」や「学派」のようなもの。基本的な教えは共通していますが、重視する点や実践方法が異なります。
なぜ仏教は宗派に分かれたのか?
お釈迦様の教えは膨大だった
仏教の開祖であるお釈迦様(ブッダ)は、約2500年前にインドで悟りを開き、その後40年以上にわたって教えを説き続けました。その教えは非常に膨大で、様々な人々、様々な状況に合わせて説かれたため、一つの形にまとめることが難しかったのです。
お釈迦様が亡くなった後、弟子たちはその教えを伝えようとしましたが、どの教えを最も重要と考えるか、どのように実践するかについて、次第に異なる意見が生まれました。これが宗派が分かれるきっかけとなりました。
日本に伝わるまでの長い旅
仏教はインドで生まれた後、大きく分けて2つのルートで世界に広がりました。中国、朝鮮半島を経て日本に伝わったのが大乗仏教(北伝仏教)で、スリランカから東南アジアに広がったのが上座部仏教(南伝仏教)です。タイやミャンマーなどの仏教は上座部仏教で、日本の仏教とは異なる形態を持っています。
日本には6世紀頃(西暦538年または552年)に大乗仏教が伝わり、奈良時代・平安時代・鎌倉時代とそれぞれの時代背景の中で新しい宗派が誕生しました。現在では13宗56派と呼ばれる伝統的な宗派が存在していますが、これは日本独自の宗派区分です。
📌 13宗56派とは
1940年(昭和15年)の宗教団体法施行以前に公認されていた日本の仏教宗派の区分です。13の主要な宗派(13宗)と、それぞれから分かれた56の分派(56派)を指します。代表的なものには、天台宗、真言宗、浄土宗、浄土真宗、曹洞宗、臨済宗、日蓮宗などがあります。中国や韓国にも独自の仏教宗派があり、世界的には仏教は多様な形で発展しています。
日本各地に様々な宗派の寺院が存在します
宗派によって何が違うのか?
宗派が違うと、具体的にどのような点が異なるのでしょうか。主な違いを見ていきましょう。
① 本尊(ほんぞん)が違う
本尊とは、その宗派が最も大切にしている仏様のことです。お寺の本堂や、家庭の仏壇に祀られています。
主な本尊の例
- 釈迦如来:お釈迦様そのもの(曹洞宗、臨済宗など)
- 阿弥陀如来:西方極楽浄土の仏様(浄土宗、浄土真宗)
- 大日如来:宇宙の真理を表す仏様(真言宗)
- 曼荼羅:仏の世界を図で表したもの(日蓮宗では大曼荼羅)
② よりどころとするお経が違う
仏教には数多くのお経(経典)がありますが、宗派によってどのお経を最も重要視するかが異なります。
代表的なお経と宗派
- 法華経:天台宗、日蓮宗
- 浄土三部経:浄土宗、浄土真宗
- 般若心経:多くの宗派で読まれる(ただし浄土真宗では基本的に読まない)
- 大日経・金剛頂経:真言宗
③ 教えの重点が違う
同じ仏教でも、宗派によって何を最も大切な教えとするかが異なります。
宗派ごとの教えの特徴(例)
- 浄土宗・浄土真宗:念仏を唱えることで阿弥陀仏に救われる
- 曹洞宗・臨済宗:座禅によって悟りを開く
- 真言宗:密教の修行によって即身成仏を目指す
- 日蓮宗:「南無妙法蓮華経」と唱えることで救われる
④ 作法が違う
お葬式や法事での作法も宗派によって異なります。特に焼香の回数や数珠の持ち方などに違いがあります。
焼香の回数(例)
- 浄土真宗本願寺派:1回
- 真宗大谷派:2回
- 曹洞宗:2回
- 日蓮宗:1回または3回
※ただし、寺院や地域によって異なる場合があります。
宗派によって仏壇の本尊や作法が異なります
自分の宗派を知る方法
「うちの宗派は何だろう?」と思ったら、以下の方法で確認できます。
✅ 宗派を知る方法
- 菩提寺に聞く:先祖代々のお墓があるお寺(菩提寺)に確認する
- 仏壇を見る:仏壇の本尊(中央の仏像や掛け軸)から判断できる
- お墓の卒塔婆を見る:お墓に立てられた卒塔婆に宗派名が書かれていることがある
- 親族に聞く:年配の親族なら知っている可能性が高い
- 過去の法事の案内状を見る:お寺の名前から調べることができる
📌 近くの寺院を探すには
菩提寺が分からない場合や、近くの寺院を探したい場合は、寺院検索サイトが便利です。八百万の神や旅探(ホームメイト)などのサイトでは、地域や宗派から寺院を検索できます。宗派別の公式サイトでも寺院検索が可能です。
宗派を知ることの意味
「宗派なんて知らなくても困らない」と思うかもしれませんが、実は知っておくと役立つ場面があります。
まず、お葬式や法事の準備がスムーズになります。どのお寺に依頼すればよいか、どんな作法で行うか、事前に分かっていれば安心です。また、仏壇やお墓を新しくする際にも、宗派が分からないと本尊や位牌の形式が決められません。
さらに、自分のルーツを知ることにもつながります。先祖が大切にしてきた信仰を理解することで、家族の歴史や文化的背景を知るきっかけになります。
💡 大切なこと
宗派の違いは、どれが優れているとか劣っているということではありません。それぞれの宗派には、長い歴史の中で培われた独自の教えと実践があります。大切なのは、故人や先祖への感謝の気持ちを持つことです。
まとめ
この記事のポイント
- 宗派とは:仏教という大きな枠組みの中でのグループ分け
- 分かれた理由:お釈迦様の教えが膨大で、重視する点が異なったため
- 日本の宗派:13宗56派という日本独自の区分がある
- 主な違い:本尊、お経、教えの重点、作法などが異なる
- 確認方法:菩提寺、仏壇、親族への確認などで分かる
- 意義:法事の準備や家族の歴史を知るために役立つ
仏教の宗派は、一見すると複雑に見えるかもしれませんが、基本的な考え方を理解すれば難しくありません。大切なのは、それぞれの宗派が長い歴史の中で培ってきた教えと実践を尊重し、故人や先祖への感謝の気持ちを持つことです。
もし、より詳しく各宗派の特徴や歴史を知りたい場合は、菩提寺のご住職に相談したり、関連書籍を読んだりすることをおすすめします。自分の家の宗派を知ることは、日本の文化や歴史を理解する第一歩にもなるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 宗派が違うと葬儀に参列できませんか?
A. いいえ、参列できます。宗派が違っても葬儀に参列することは全く問題ありません。ただし、焼香の作法などが異なる場合があるので、不安な場合は周りの方の作法を参考にするとよいでしょう。心を込めて故人を偲ぶ気持ちが最も大切です。
Q2. 自分の家の宗派を変えることはできますか?
A. はい、可能です。ただし、先祖代々のお墓が菩提寺にある場合、改宗するとお墓の管理や法事に影響が出る可能性があります。家族や親族とよく相談し、菩提寺にも事前に相談することをおすすめします。
Q3. 仏壇がないと宗派は分かりませんか?
A. 仏壇がなくても大丈夫です。菩提寺に直接問い合わせる、お墓の管理者に確認する、親族に聞くなど、他の方法でも調べられます。また、過去の法事の資料や位牌があれば、そこから宗派を推測することも可能です。
Q4. 同じ仏教なのに、なぜこんなに宗派があるのですか?
A. お釈迦様が40年以上にわたって説いた教えは非常に膨大で、その中のどの部分を重視するか、どのように実践するかによって、弟子たちの間で異なる解釈が生まれました。また、日本に伝わる過程や、各時代の社会背景の中で、新しい宗派が誕生していったためです。
Q5. 宗派によってご利益に違いはありますか?
A. 仏教の本質は、ご利益を求めることではなく、悟りを開くことや心の平安を得ることにあります。どの宗派も根本的には同じ仏教の教えに基づいており、優劣はありません。大切なのは、自分や家族が信じる教えを大切にし、心を込めて実践することです。
Q6. 菩提寺とは何ですか?
A. 菩提寺(ぼだいじ)とは、先祖代々のお墓があり、葬儀や法事でお世話になっているお寺のことです。檀家(だんか)として寺院を支援し、その見返りとして供養や法事を執り行ってもらう関係にあります。自分の家の菩提寺を知っておくことは、法事の際に役立ちます。
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